Ruby on Rails チュートリアル
Ruby on Rails チュートリアル
プロダクト開発の0→1を学ぼう
第6版 目次
- 推薦の言葉
- 謝辞
- 著者
- 著作権とライセンス
- 第1章ゼロからデプロイまで
- 第2章Toyアプリケーション
- 第3章ほぼ静的なページの作成
- 第4章Rails風味のRuby
- 第5章レイアウトを作成する
- 第6章ユーザーのモデルを作成する
- 第7章ユーザー登録
- 第8章基本的なログイン機構
- 第9章発展的なログイン機構
- 第10章ユーザーの更新・表示・削除
- 第11章アカウントの有効化
- 第12章パスワードの再設定
- 第13章ユーザーのマイクロポスト
- 第14章ユーザーをフォローする
推薦の言葉
私が前にいた会社(CD Baby)は、かなり早い段階でRuby on Railsに乗り換えたのですが、またPHPに戻ってしまいました(詳細は私の名前をGoogleで検索してみてください)。そんな私ですが、とある本を使ってもう一度試してみた結果、今度はRailsに無事乗り換えることができました。それがこのRailsチュートリアルという本です。
私は多くのRails関連の本を参考にしてきましたが、真の決定版と呼べるものは本書をおいて他にありません。本書ではあらゆる手順が『Rails流 (the Rails Way)』で行われています。最初のうちは慣れるまでに時間がかかりましたが、この本を終えた今、ついにこれこそが自然な方式だと感じられるまでになりました。また、本書では多くのプロが推奨するテスト駆動開発をほぼ全編に取り入れています。実例を使ってここまで分かりやすく解説された本は、本書が初めてでしょう。極めつけはGitやGitHub、Herokuの実践までも含めている点です。このような実践もチュートリアルに含まれているため、読者はまるで実際のプロダクト開発を体験しているかのような感覚が得られ、それでいてチュートリアルとして見事に一本化されています。
物語のような一本道の構成も素晴らしいです。私自身、演習問題もやりながら、このRailsチュートリアルを3日間かけて一気に完走しました1。最初から最後まで、途中を飛ばさずにやるのが有益な読み方です。それでは、楽しんでお読みください!
Derek Sivers (sive.rs)2 CD Baby 創業者
- 3日間で完走できる人は例外です! 実際には数週間〜数ヶ月かけて進めるのが一般的です。↑
- たった3分の有名なTED動画『社会運動をどうやって起こすか』を視聴された方もいるのではないでしょうか。その方からの推薦の言葉です。↑
謝辞
Railsチュートリアルは私の以前の著書『RailsSpace』と、当時の共著者Aurelius Prochazkaから多くを参考にさせてもらっています。Aureには、協力と本書への支援も含め、感謝したいと思います。また、RailsSpaceとRailsチュートリアルの編集を担当したDebra Williams Cauley氏にも謝意を表したく思います。彼女が野球の試合に連れて行ってくれる限り、私は本を書き続けるでしょう。
私にインスピレーションと知識を与えてくれたRubyistの方々にも感謝したいと思います:David Heinemeier Hansson, Yehuda Katz, Carl Lerche, Jeremy Kemper, Xavier Noria, Ryan Bates, Geoffrey Grosenbach, Peter Cooper, Matt Aimonetti, Mark Bates, Gregg Pollack, Wayne E. Seguin, Amy Hoy, Dave Chelimsky, Pat Maddox, Tom Preston-Werner, Chris Wanstrath, Chad Fowler, Josh Susser, Obie Fernandez, Ian McFarland, Steven Bristol, Pratik Naik, Sarah Mei, Sarah Allen, Wolfram Arnold, Alex Chaffee, Giles Bowkett, Evan Dorn, Long Nguyen, James Lindenbaum, Adam Wiggins, Tikhon Bernstam, Ron Evans, Wyatt Greene, Miles Forrest, Sandi Metz, Ryan Davis, Aaron Patterson, Pivotal Labsの方々、Herokuの方々、thoughtbotの方々、そしてGitHubの方々、ありがとうございました。最後に、ここに書ききれないほど多くの読者からバグ報告や提案を頂きました。ご協力いただいた皆様のおかげで、本書の完成度をとことん高めることができました。
丁寧なレビュー、技術的なフィードバック、そして役立つ提案をしてくれたAndrew Thaiに感謝します。また、Learn Enough to Be Dangerousの共同創業者であるNick MerwinとLee Donahoe、日々のチュートリアル制作をサポートしてくれてありがとう。
最後に、たくさんの読者の皆さん、そして、ここに挙げきれないほど多いコントリビューターのみんな、バグ報告や提案をしてくれてありがとう。彼ら/彼女らの多くの手助けに、最高の感謝を。
著者
マイケル・ハートル(Michael Hartl) は、Webサービス開発を学ぶときによく参考にされる『Ruby on Rails Tutorial』の著者であり、LearnEnough.comの共同創業者でもあります。カリフォルニア工科大学で物理学の講師を務めた経験があり、そのときにLifetime Achievement Award for Excellence in Teachingを受賞しました。
ハーバード大学卒業後、カリフォルニア工科大学で物理学博士号を取得。シリコンバレーの有名な起業プログラム Y Combinator の卒業生でもあります。
著作権とライセンス
Ruby on Rails Tutorial Copyright © Michael Hartl
Railsチュートリアルの題材アプリのソースコードは、MITライセンスおよびBeerwareライセンスの元で自由にお使いいただけます。(具体的な利用方法については @y_catch さんの記事『MITライセンスが適用されたコードを利用するには』をご参照ください。)
The MIT License
Copyright (c) 2016 Michael Hartl
Permission is hereby granted, free of charge, to any person
obtaining a copy of this software and associated documentation
files (the "Software"), to deal in the Software without restriction,
including without limitation the rights to use, copy, modify, merge,
publish, distribute, sublicense, and/or sell copies of the Software,
and to permit persons to whom the Software is furnished to do so,
subject to the following conditions:
The above copyright notice and this permission notice shall be
included in all copies or substantial portions of the Software.
THE SOFTWARE IS PROVIDED "AS IS", WITHOUT WARRANTY OF
ANY KIND, EXPRESS OR IMPLIED, INCLUDING BUT NOT LIMITED
TO THE WARRANTIES OF MERCHANTABILITY, FITNESS FOR
A PARTICULAR PURPOSE AND NONINFRINGEMENT. IN NO EVENT
SHALL THE AUTHORS OR COPYRIGHT HOLDERS BE LIABLE FOR
ANY CLAIM, DAMAGES OR OTHER LIABILITY, WHETHER IN AN
ACTION OF CONTRACT, TORT OR OTHERWISE, ARISING FROM,
OUT OF OR IN CONNECTION WITH THE SOFTWARE OR THE USE
OR OTHER DEALINGS IN THE SOFTWARE.
THE BEERWARE LICENSE (Revision 42)
Michael Hartl wrote this code. As long as you retain
this notice you can do whatever you want with this stuff.
If we meet some day, and you think this stuff is worth it,
you can buy me a beer in return.
第1章ゼロからデプロイまで
Railsチュートリアルへようこそ!
本チュートリアルの目的は、皆さんにWebサービス開発で必要になる基礎知識を学んでもらうことです。本チュートリアルで学んだことは、Webサービス開発者としての仕事を探したり、フリーランスとしてのキャリアを始めたり、自分のWebサービスで起業する場面などで役立ちます。既に開発の経験があれば、より短期間でWebサービス開発の流れを掴めるでしょう。
Railsチュートリアルでは汎用性の高いスキルの習得を優先しています。今後他のプログラミング言語やフレームワークも学ぶ予定の人にとっても、ここで学んだWebサービス開発の基本が役立つように仕上げています。
本チュートリアルでは『Ruby on Rails』を題材にしています。これはWebサービス開発の基本を学ぶ上で、これ以上ふさわしいフレームワークは無いと考えているからです。
Ruby on Rails(略称『Rails』)は、プログラミング言語『Ruby 』で書かれたフリーかつオープンソースのWeb開発フレームワークです。
Railsは本格的なWebサービスを開発するツールとして急速に有名になり、GitHubやAirbnb、SoundCloud、Disney、Hulu、Shopifyといった世界的に有名な企業はもちろん、日本国内でもnoteやクックパッド、ProgateやQiitaなどのサービスで採用されています。実際に『Rails 募集』で検索すると、機械学習系スタートアップも含め、凄まじい数のページがヒットします。
Webサービス開発にはRails以外にも多くの選択肢がありますが、Railsのアプローチは豪快かつ強力で、幅広い場面で使えます。初めてWebサービスを開発する人であってもRailsの標準機能だけでWebサービスが作れるだけでなく、リリースしたWebサービスが大きく成功したときの拡張性も兼ね備えています。また、シングルページアプリケーション(SPA)やモバイルアプリと組み合わせて柔軟に開発したい場面でも、Railsは素晴らしいバックエンドを提供できます。
Railsの大きなメリットの1つとして、『次々とリリースされる新ツール』問題と程よい距離を保っている点が挙げられます。特にこれからWebサービス開発を学ぶ人たちにとっては、数ヶ月かけて学んだツールが、半年もしないうちに別の新しいツールに置き換えられてしまうといった場面は重大です。Railsフレームワークの作者であるDavid Heinemeier Hanssonは次のようにコメントしたことがあります。
かつて、目移りするような複雑な技術をアレコレ売り歩いてたJ2EEというものがありましたが、当時と驚くほどよく似た不満を、昨今のJavaScript界隈で見かけます。Railsが登場した当初から現在に至るまで、さまざまな場所で(フレームワークに関する)議論が続いていますが、Railsが中核に据えている前提は今も残り続けています。すなわち、プログラミングの慣習をパターン化し、不要な選択肢を外し、本格的なWebアプリケーションを作りたい人に最適なデフォルト設定を提供することで、生産性を劇的に向上させられるのです。
このような設計哲学のおかげもあって、本チュートリアルで学べるWebの基本は、2014年の第3版からほとんど変わらず安定し続けています。つまり、本チュートリアルで皆さんが学んだことは、今後も当分古びることなく役に立つでしょう。
そしてRailsは今も絶え間なく進化を繰り返しています。たとえばRails 6では、メールのルーティングやリッチテキスト機能に加えて、並列テストや複数データベースのサポートといった高度な機能も新たに導入されました。“scalable by default” というYouTube動画 (英語) では、GitHub社のエンジニアであるEileen Uchitelleさんによって『アプリがどれほど大きく成長してもRailsはスケールできる』と解説されています。
実際、共同開発プラットフォームとして絶大な人気を誇るGitHubには安心して寄りかかれる高い安定性があり、オンラインストア構築で大成功を収めたShopifyは今なお成長し続けています。また、Railsの新しいバージョンがリリースされると、そのような成功した大企業によって即座にテストされるという点も、私たちにとっては大きなメリットです。
Railsは、2004年にフリーランスのWeb開発者が仕事の合間に手掛けたことから始まったとは思えない素晴らしい出来です。当時Railsを選ぶことは最先端でありリスクも伴う選択でしたが、今ではそうした苦労なしにRailsを選べます。
Railsは多くの事例によって実証され、生産性の高い機能を揃え、有用なコミュニティによって支えられています。Railsは、現在も本格的なWebサービス開発にふさわしい魅力的なフレームワークなのです。
1.1 前提知識
本チュートリアルはプログラミング言語Rubyとコマンドラインに、HTMLとCSS、そして若干のJavaScriptとSQLを含めた総合的なプロダクト開発のチュートリアルです。前提条件は特にありませんが、プログラミングの学習経験があると良いです。
プログラミング経験が全くない方向けにも、初心者向けプログラミング学習サービス「Progate」と提携し、Webの基礎知識を学べるコースも用意しています。同サービスは環境構築不要かつブラウザ上でコーディング体験ができるため、特にプログラミング未経験者にオススメです。このまま本チュートリアルを読み進めても大丈夫ですが、もし「難しい」と感じたら、下記コースまたはWeb開発パス(Ruby on Rails)で基本を押さえましょう。
- 第1章 ゼロからデプロイまで
- 第4章 Rails風味のRuby
- 第5章 レイアウトを作成する
- 第14章 ユーザーをフォローする
- Railsの基礎
上記コースを学んだ上で、それでも「難しい」と感じる方は、下記の追加コンテンツや質問対応サービスもぜひご検討ください。
Railsチュートリアル初心者シリーズ
Progateと本書の違いの1つに、ブラウザで開発するかローカルで開発するかがあります。初学者向けの本シリーズでは、Progateでプログラミング経験をした方を対象として、ローカル環境での開発に役立つ実践的知識を詰め込んでいます。具体的には、コマンドラインやテキストエディタの環境構築から、GitやGitHubに特化した知識まで、ローカル環境で躓きがちな部分を重点的に補足しています。
- 開発基礎編(詳細)
また、ローカル環境の難しさと同じことが、Web技術にも言えます。本書ではRuby on Railsという本格的なフレームワークを題材としていますが、JekyllやSinatraといった比較的シンプルなRuby製ツールでWeb開発を経験してみると、より鮮明にWebの仕組みが掴めます。
- Webの仕組みを学ぼう(準備中)
- RubyとSinatraで学ぶWeb技術の基本
- Webサービス開発を学ぼう(詳細)
- Railsチュートリアル第6版Webテキスト(Rails 6、GitHub対応。動画特典付き)
事前登録していただくとリリース時にメールでお知らせが届きます。最新情報は公式のnoteマガジンやYouTubeチャンネルからも発信していくので、ぜひご活用ください。
Railsチュートリアル解説動画
さらに!『ただ学ぶのではなく早く学びたい』といった方向けに解説動画と質問対応サービスもご用意しました。筑波大学や琉球大学などでも好評のコンテンツとなっているので、状況に応じて活用していただけると幸いです。
- Railsチュートリアル解説動画
5日間の集中解説セミナーを収録した実演付き解説動画です。イラストと実演で効率的に学べるので、すばやく学習を完了させたい人にオススメです。
- 質問対応サポート付き解説動画【提供: ShareWis】
現役Rubyエンジニアのサポート付きで学べる、解説動画の質問対応付きサービスです。後半の章ほど難しくなっていきますが、サポートを受けながらしっかり学ぶことができます。
- コミュニティサポート付き解説動画【提供: TechCommit】
コミュニティ型の学習支援サービスです。独学での学習が不安な方にオススメです。(【Railsチュートリアルコラボ】Rails学習支援追加パックでお申し込みください。)
Ruby on Railsガイド
皆さんがWebサービスを実際に開発するときや、本書で紹介する各機能の詳細を知りたいときに役に立つのが、1,600ページを超えるRuby on Railsの大型ドキュメント『Railsガイド』です。
Railsチュートリアル完走者が対象となっているので、本書を完走後、自分のWebサービスを開発するときや、仕事でコードを書く場面などでお使いください。全文検索やダークモードに対応したProプラン、法人向けTeamプラン、ダウンロード可能な電子書籍版もあります。
学習ロードマップ
最後に、各コンテンツやサービスの関係性を学習マップ(図 1.1)でまとめてみました。皆さんの状況に合わせて、自分に合う学習方法を探してみてください。

Railsチュートリアルの構成
本チュートリアルは、実際に動くWebアプリケーションを開発しながら学ぶ構成になっています。最初は簡単なページ表示のみですが、章が進むにつれてユーザー登録やログイン機構など、少しずつに高度なWebアプリケーションになっていきます。始めは最小限のhelloアプリ( 1.3、図 1.2)で各種セットアップを整え、次に少しだけ機能が増えたtoyアプリ( 2章、図 1.3)を体験してから、最後に本格的なWebアプリケーション『Sample App』( 3章〜14章、図 1.4)の開発に取り組みます。
本チュートリアルでは、あらゆるWebサービス開発で通用する一般的なトピックを中心に学べるようになっています。例えばユーザー登録やログイン機構、メールを使ったアカウント認証やパスワード設定といったトピックなどです。実際のWebサービスのほとんどでは、これらの主要な機能が盛り込まれています。それだけでなく、 14章で完成するSample Appの最終版では、初期のTwitterを連想させるような仕組みになっています。そういえば偶然にも、Twitterも最初はRailsで構築されていましたね。(当時の開発者も「初期にRubyを選んだのは間違いではなかった」と強調しています)
それではチュートリアルを始めていきましょう!



1.2 さっそく動かす
本チュートリアルの特徴の1つは、難関であるローカル環境のセットアップを後回しにしている点です。本チュートリアルはブラウザで動かせる開発環境として著名なAWS Cloud9と長年に渡ってパートナーシップを結んでいます。そのおかげで、本チュートリアルではCloud9を用いることで、ローカル環境で躓きがちなセットアップを後回しにしてプロダクト開発が学べるようになっています。
ここは実に重要な点です。Rubyをインストールし、Railsをインストールし、必要な関連ツールを何から何までインストールするのは、ベテラン開発者にとってもしんどい作業になることがあります。また、お使いのOS(Windows・macOS・Linux)やOSのバージョン、テキストエディタやIDE(統合開発環境)の好みなどでセットアップ方法がバラつくため、検索で見つかった記事が自分にとっては逆効果になることもあります。
だからこそ、クラウド統合開発環境すなわちクラウドIDE( 1.2.1)は、特に初心者にとって役立つサービスとなります。クラウドIDEはWebブラウザで簡単に動かせるので、読者のOSがそれぞれ違っていてもまったく同じに動きます。しかも作業中の状態を保持してくれるので、チュートリアルをしばらくお留守にしてから戻ってきても以前の状態からすぐに再開できます。
とはいえ、いずれはお使いのローカル環境でセットアップする必要が出てきます。特に業務で開発する場面では、ある程度以上の熟練度(コラム 1.2)も必要になるでしょう。しかし焦ってはいけません。現在のベテラン開発者が歩んできたように、私達も少しずつ熟練に近づいていけばよいのです。
Railsチュートリアルや初心者シリーズでは、シリーズを通じて「熟練(Techinical Sophistication)」をテーマに据えています。
技術的に困難な課題を魔法のように解決するには、やはりハードスキル(操作方法などの定型化しやすいスキル)とソフトスキル(デバッグなどの定型化しにくいスキル)の両面で熟練になる必要があるでしょう。Web開発やプログラミングは一般的に高度な技術とされていますが、技術は「知っていればよい」という類のものではありません。もちろん、メニュー項目をクリックしたら何が起きるかも分からないようでは話になりませんが、一方で、エラーメッセージを検索して調べたり、もう少しだけ頑張るべきか別の方法を探すべきかを見極める力も必要です1(図 1.5)。
言い換えると、Webアプリケーションには動的な部品がたくさんあるので、こうした両面のスキルを身に付けるにはもってこいです。しかもRailsのWebアプリケーションの場合は、適切なRuby gemの選定方法、bundle install
やbundle update
の実行方法、ローカルWebサーバーが動かなくなったときの再起動方法といった技術も身に付けることができます(今私が書き連ねた用語がさっぱり分からなくてもご安心を。本チュートリアルですべて説明いたしますので)。
本チュートリアルを進めていれば、どうやっても手順通りに動かないことがあるでしょう。ハマりやすい手順についてはできるだけ補足するようにしていますが、すべての状況をカバーすることは不可能です。そうしたトラブルはむしろ、熟練になるための修練だと捉えて課題解決に取り組んでみましょう。それでも、どうしてもうまくいかないときは...「バグではありません、仕様です!」(『開発基礎編 コマンドライン』より)

1.2.1 開発環境
開発環境は、1人1人すべて異なります。なぜなら開発者は慣れてくるにつれて、自分の環境をカスタマイズするものだからです。開発環境を大別すると、テキストエディタやコマンドラインを組み合わせて使う環境と、IDE(統合開発環境)の2つに分けられます。そしてRailsチュートリアルでは、環境構築の複雑さを避けるためにAWS Cloud9という素晴らしいクラウドIDEサービスを使って進めていきます。AWS Cloud9ではRubyやRubyGems、Gitなど、Ruby on Railsの開発環境の構築に必要なソフトウェアがほとんど組み込まれています。RailsやHerokuなどの一部のソフトウェアはインストールされていませんが、これらはもちろん本書の中で説明してあります(1.2.2)。
クラウドIDEにはWeb開発に必要な三種の神器であるテキストエディタ、ファイルブラウザ、コマンドラインターミナル(図 1.6)もしっかり組み込まれています。また、クラウドIDEのテキストエディタでは、Ruby on Railsの大きなプロジェクトには不可欠とも言うべき横断的ファイル検索も利用できます2。たとえクラウドIDEを今後使うことがないとしても、コマンドラインターミナルやテキストエディタなどの開発ツールで一般にどんなことができるのかを知っておくには最適です(筆者としても他のエディタの使い方は知っておいた方が良いと考えています)。

クラウドIDEを利用するための手順は次のとおりです。3
- Cloud9は現在Amazon Web Services(AWS)に統合されたため、Cloud9を使うためにはAWSアカウントが必要になります。AWSアカウントを既にお持ちの場合は、AWSにログインしてください4。AWSコンソールに行き、検索ボックスから “Cloud9” と入力すると、Cloud9の開発環境を作成するためのページに行けます。
- Amazon Web Services(AWS)アカウントを持っていない場合は、AWS Cloud9のユーザー登録をします5。悪用防止のためクレジットカード情報の入力が必須になりましたが、AWSには無料利用枠があるのでご安心ください。アカウントが有効になるまで最大で24時間かかりますが、著者の場合は約10分ほどで完了しました。
- Cloud9の管理ページ(図 1.7)に無事たどり着いたら “Create environment” をクリックし、図 1.8のような画面になるまで進めてください。「rails-tutorial」を含む名前などの情報を適宜入力して(図1.8)6次のページに進みます。ここでは(Amazon Linuxではなく)Ubuntu Serverを選択してから“Next step”をクリックします(図 1.9)。
確認ボタンを数回クリックしてデフォルトの設定を受け付けると、AWSがIDEのプロビジョニングを開始します(図 1.11)。このとき、“root”ユーザーになっているという警告が表示されるかもしれませんが、この段階では無視して構いません(ここでの望ましい方法は割と複雑になるので、13.4.4のIAM(Identity and Access Management)の項で後述します)。





Rubyの世界では、インデントに2つのスペースを使うのがほぼ常識になっているので、このエディタのインデント設定もデフォルトの4から2に変えておくことをオススメします。インデント設定を変更するには、[Soft Tabs]設定を開いて右上のマイナス記号を値が「2」になるまでクリックします(図 1.12)。設定の変更はその場で反映されるので、[Save]ボタンをクリックする必要はありません。

なお、クラウドIDEを使っている場合はGitHubとHerokuコマンドをセットアップする必要があります。細かな手順は 1.4.3と1.5.1のインストール手順で説明します。
また、今すぐ設定する必要はありませんが、クラウドIDE上でテスト環境をセットアップする際の応用的な設定は3.6で解説しています。詳細は3.6.2まで進んだときに学びましょう。
1.2.2 Railsをインストールする
1.2.1の開発環境には必要なソフトウェアがすべて含まれていますが、Railsそのものは含まれていません。これは意図したものです。チュートリアルを期待どおりに進めるには、Railsの正確なバージョンをインストールすることが重要だからです。
最初に、Rubyドキュメントのインストールで無駄な時間を使わないよう、コマンドに設定を少々追加してみましょう(リスト 1.1)7 これはシステムで1回だけ設定しておけばOKです(コマンドラインなどの慣習について詳しくは 1.7をご覧ください)。
.gemrc
ファイルを設定する
$ echo "gem: --no-document" >> ~/.gemrc
Railsをインストールするには、RubyGemsが提供するgem
コマンドを使います。これは、リスト 1.2でコマンドラインターミナルに入力するコマンドに関連します(クラウドでないローカルシステムで開発する場合は、通常のターミナルウィンドウに入力してください)(クラウドIDEを使う場合は、図 1.6に表示されているコマンドライン領域に入力してください)。
$ gem install rails -v 6.0.3
-v
というオプションを使うことで、インストールされるRailsのバージョンを正確に指定できます。rails
コマンドに-v
オプションを使うとインストールされたことを確認できます。
$ rails -v
Rails 6.0.3
このコマンドで出力されるバージョン番号は、インストールされたバージョン(リスト 1.2)と正確に一致する必要があります。
もうひとつインストールするものがあります。JavaScriptソフトウェアの依存関係を管理するYarnというプログラムです。ネイティブOS上で開発する場合は、自分のプラットフォームに合ったYarnインストール手順(英語)に従ってください。クラウドIDEで開発する場合は、次のコマンドを実行するだけで必要なツールをCDN経由でダウンロードおよびセットアップできます。
$ source <(curl -sL https://cdn.learnenough.com/yarn_install)
なお、以下のような警告メッセージがときどき表示されることがあると思います。
========================================
Your Yarn packages are out of date!
Please run `yarn install --check-files` to update.
========================================
そんなときは、メッセージの指示に従ってyarn
コマンドを実行すればOKです。
$ yarn install --check-files
以上でインストールはおしまいです!Ruby on RailsでWeb開発を行うための準備が完全に整いました。
1.3 最初のアプリケーション
コンピュータープログラミングにおける古来の伝統に従い、最初に作るアプリケーションは「Hello World」を表示するプログラムにしましょう。具体的には、Webページに「hello, world!」という文字列を表示するだけの単純なアプリケーションを、開発環境(1.3.4)と本番環境(1.5)でそれぞれ作成します。
どんなRailsアプリケーションも最初の作成手順は基本的に同じです。rails new
コマンドを実行して作成します。このコマンドを実行するだけで、指定のディレクトリにRailsアプリケーションのスケルトンを簡単に作成できます。1.2.1で推奨しているCloud9 IDEを利用しない場合は、Railsプロジェクトで使うためのenvironment
ディレクトリを作成しておいてください(リスト 1.3)。8
environment
ディレクトリを作る
# クラウドIDEではこの手順は不要です
$ cd # プロジェクトのホームディレクトリに移動
$ mkdir environment # environmentディレクトリを作成
$ cd environment/ # 作成したenvironmentディレクトリに移動
リスト 1.3ではUnixのcd
コマンドとmkdir
コマンドを使います。こうしたコマンドが分からない方は、コラム 1.3をご覧ください。
WindowsユーザーやmacOSユーザーの多くはコマンドラインというものに馴染みがないことでしょう(macOSユーザーの方がほんのわずかコマンドラインを知っている人は多いかもしれませんが)。幸い、今はオススメのクラウド開発環境のおかげでUnixコマンドラインをみな同じように扱うことができ、Bashなどの標準的なシェルコマンドラインインターフェイスを実行できます9。
コマンドラインの基本的な仕組みは本当にシンプルです。ユーザーはコマンドを発行(issue)することで、実にさまざまな操作を実行できます。ディレクトリの作成ならmkdir
コマンド、ファイルの移動やリネームはmv
コマンド、ファイルのコピーならcp
コマンド、ファイルシステム内でのディレクトリの移動はcd
コマンド、という具合です。GUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)しか使ったことのないユーザーからすると、コマンドラインの黒い画面は何やら恐ろしげでとっつきが悪いように見えるかもしれませんが、見た目ほど当てにならないものはありません。コマンドラインはそれ自体が強力なツールであり、エンジニアにとってなくてはならない道具箱なのです10。そうでなければ、どうしてエンジニアが揃いも揃ってコマンドラインを使うでしょうか。経験豊富な開発者のデスクトップ画面を覗きこめば、十中八九どころか99%は、黒いターミナルウィンドウがいくつも開き、そこで多数のコマンドラインシェルが忙しく実行されているはずです。
コマンドラインについて話しだすときりがないので深入りはしませんが、本チュートリアルで必要なUnixコマンドラインのコマンドはほんのわずかしかありませんのでご安心ください(表 1.1)。Unixの基本的なコマンドラインについてもっと知りたい方は、『開発基礎編: コマンドライン』をぜひお読みください。
説明 | コマンド | コマンド例 |
ディレクトリ内容の表示 | ls |
$ ls -l |
ディレクトリの作成 | mkdir <ディレクトリ名> |
$ mkdir environment |
ディレクトリの移動 | cd <ディレクトリ名> |
$ cd environment/ |
上のディレクトリに移動 | $ cd .. |
|
ホームディレクトリに移動 | $ cd ~ もしくは $ cd |
|
ホームディレクトリ直下のenvironmentに移動 | $ cd ~/environment/ |
|
ファイルの移動やリネーム | mv <移動元> <移動先> |
$ mv foo bar |
mv <現在の名前> <変更後の名前> |
||
ファイルのコピー | cp <コピー元> <コピー先> |
$ cp foo bar |
ファイルの削除 | rm <ファイル名> |
$ rm foo |
空のディレクトリの削除 | rmdir <ディレクトリ名> |
$ rmdir environment/ |
中身のあるディレクトリの削除 | rm -rf <ディレクトリ名> |
$ rm -rf tmp/ |
ファイルの内容の結合と表示 | cat <ファイル名> |
$ cat ~/.ssh/id_rsa.pub |
ローカルシステムまたはクラウドIDEで行う次の手順は、リスト 1.4のコマンドを使った最初のアプリケーションの作成です。リスト 1.4のコマンドでは、Railsのバージョンを明示的に指定している点にご注目ください。このようにバージョンを指定することで、リスト 1.2と同じバージョンのRailsで、最初のアプリケーションと同じファイル構造を作成することができます。
rails new
を実行する(バージョン番号を指定)
$ cd ~/environment
$ rails _6.0.3_ new hello_app
create
create README.md
create Rakefile
create .ruby-version
create config.ru
create .gitignore
create Gemfile
run git init from "."
Initialized empty Git repository in /home/ubuntu/environment/hello_app/.git/
create package.json
create app
create app/assets/config/manifest.js
create app/assets/stylesheets/application.css
create app/channels/application_cable/channel.rb
create app/channels/application_cable/connection.rb
create app/controllers/application_controller.rb
create app/helpers/application_helper.rb
.
.
.
ご覧のとおり、rails
コマンドを実行すると大量のファイルとディレクトリが作成されます。Webアプリケーションのディレクトリをどう構成するかは本来自由なのですが、RailsのようなWebフレームワークではディレクトリとファイルの構造(図 1.13)はこのように標準化されています。ファイル/ディレクトリ構造がすべてのRailsアプリで標準化されているおかげで、他の開発者の書いたRailsのコードが読みやすくなります。これはWebフレームワークを導入する大きなメリットです。
Railsで使われるデフォルトのファイルについては表 1.2をご覧ください。これらのファイルやディレクトリの意味や目的については本書全体に渡って説明いたします。特に5.2.1以降では、Rails 3.1から搭載されたアセットパイプラインの一部であるapp/assets
ディレクトリについて、詳しく説明します。アセットパイプラインによって、CSS(Cascading Style Sheet)や画像ファイルなどのアセット(資産)を簡単に編成することもデプロイすることもできます。

ディレクトリ | 用途 |
app/ |
モデル、ビュー、コントローラ、ヘルパーなどを含む主要なアプリケーションコード |
app/assets |
アプリケーションで使うCSS(Cascading Style Sheet)、JavaScriptファイル、画像などのアセット |
bin/ |
バイナリ実行可能ファイル |
config/ |
アプリケーションの設定 |
db/ |
データベース関連のファイル |
doc/ |
マニュアルなど、アプリケーションのドキュメント |
lib/ |
ライブラリやモジュール置き場 |
log/ |
アプリケーションのログファイル |
public/ |
エラーページなど、一般(Webブラウザなど)に直接公開するデータ |
bin/rails |
コード生成、コンソールの起動、ローカルのWebサーバーの立ち上げなどで使うRailsスクリプト |
test/ |
アプリケーションのテスト |
tmp/ |
一時ファイル |
README.md |
アプリケーションの簡単な説明 |
Gemfile |
このアプリケーションに必要なGemの定義ファイル |
Gemfile.lock |
アプリケーションで使われるgemのバージョンを確認するためのリスト |
config.ru |
Rackミドルウェア用の設定ファイル |
.gitignore |
Gitに取り込みたくないファイルを指定するためのパターン |
1.3.1 Bundler
Railsアプリケーションを新規作成したら、次はBundlerを実行して、アプリケーションに必要なgemをインストールします。Bundlerはrails
コマンド(リスト1.4)によって自動的に実行(この場合はbundle install
)されます。ここではデフォルトのアプリケーションgemを変更してBundlerを再度実行してみます。そのために、テキストエディタでGemfile
を開きます(クラウドIDEの場合は、ファイルナビゲーターで矢印をクリックしてサンプルアプリのディレクトリを開き、Gemfile
アイコンをダブルクリックします)。Gemfileの内容は、だいたい図 1.14やリスト 1.5のようになります。バージョン番号など細かな点で多少の違いがあるかもしれません。Gemfileの内容はRubyのコードですが、ここでは文法を気にする必要はありません。Rubyの詳細については第4章で説明します。ファイルやディレクトリが図 1.14のように表示されない場合、ナビゲーターの歯車アイコンをクリックして[Refresh File Tree]を選択します。
一般に、ファイルやディレクトリがうまく表示されていない場合はこのようにファイルツリーを再表示してみてください11。

Gemfile
を開く
hello_app
ディレクトリにあるデフォルトのGemfile
Gemfile
source 'https://rubygems.org'
git_source(:github) { |repo| "https://github.com/#{repo}.git" }
ruby '2.6.3'
# Bundle edge Rails instead: gem 'rails', github: 'rails/rails'
gem 'rails', '~> 6.0.3'
# Use sqlite3 as the database for Active Record
gem 'sqlite3', '~> 1.4'
# Use Puma as the app server
gem 'puma', '~> 3.11'
# Use SCSS for stylesheets
gem 'sass-rails', '~> 5'
# Transpile app-like JavaScript. Read more: https://github.com/rails/webpacker
gem 'webpacker', '~> 4.0'
# Turbolinks makes navigating your web application faster.
# Read more: https://github.com/turbolinks/turbolinks
gem 'turbolinks', '~> 5'
# Build JSON APIs with ease. Read more: https://github.com/rails/jbuilder
gem 'jbuilder', '~> 2.7'
# Use Redis adapter to run Action Cable in production
# gem 'redis', '~> 4.0'
# Use Active Model has_secure_password
# gem 'bcrypt', '~> 3.1.7'
# Use Active Storage variant
# gem 'image_processing', '~> 1.2'
# Reduces boot times through caching; required in config/boot.rb
gem 'bootsnap', '>= 1.4.2', require: false
group :development, :test do
# Call 'byebug' anywhere in the code to stop execution and get a
# debugger console
gem 'byebug', platforms: [:mri, :mingw, :x64_mingw]
end
group :development do
# Access an interactive console on exception pages or by calling 'console'
# anywhere in the code.
gem 'web-console', '>= 3.3.0'
gem 'listen', '>= 3.0.5', '< 3.2'
# Spring speeds up development by keeping your application running in the
# background. Read more: https://github.com/rails/spring
gem 'spring'
gem 'spring-watcher-listen', '~> 2.0.0'
end
group :test do
# Adds support for Capybara system testing and selenium driver
gem 'capybara', '>= 2.15'
gem 'selenium-webdriver'
# Easy installation and use of web drivers to run system tests with browsers
gem 'webdrivers'
end
# Windows does not include zoneinfo files, so bundle the tzinfo-data gem
gem 'tzinfo-data', platforms: [:mingw, :mswin, :x64_mingw, :jruby]
6.0.3
となっていなくても大丈夫です。後述するGemfileでバージョンを明示的に固定するので、その変更を加えた後でbundle update
を実行すれば本書と同じバージョンになります。 ほとんどの行はハッシュシンボル #
(4.2)でコメントされています。これらの行では、よく使われているgemとBundlerの文法の例をコメント形式で紹介しています。この時点では、デフォルト以外のgemをインストールする必要はありません。
gem
コマンドで特定のバージョン番号を指定しない限り、Bundlerは自動的に最新バージョンのgemを取得してインストールします。例えば、Gemfileに次のような記述があるとします。
gem 'sqlite3'
このsqlite3というgemのバージョンを指定する主な方法は2通りあります。これにより、Railsで使われるgemのバージョンを「ある程度」制御できます。1番目の方法は次のとおりです。
gem 'capybara', '>= 2.15'
最新バージョンのcapybara
gemがインストールされます(これはテストで使うgemです)。極端に言えば、バージョンが7.2
であっても、2.15
と同じかそれより上のバージョンならインストールされます 。
2番目の方法は次のとおりです。
gem 'rails', '~> 6.0.3'
このように指定すると、rails
gemのバージョンが6.0.3
と同じかそれより上であり、かつ6.1
より小さい場合にインストールされます。つまり、以下のコードを実行すると、>=
という記法では常に最新のgemがインストールされ、~> 6.0.3
という記法ではマイナーバージョンの部分に相当するアップデート済みのgemをインストールします(例: 6.0.4
はインストールされますが、6.1.0
はインストールされません)12。
残念ながら、経験上ちょっとしたマイナーアップグレードですら問題を引き起こすことがあります。このため、Railsチュートリアルでは基本的に事実上すべてのgemでバージョンを「ピンポイントで」指定し、がっちり固定してあります。ベテラン開発者にはGemfile
で~>
を使って指定し、最新のgemを使って進めることをオススメしていますが、チュートリアルが思い通りに動かなくなる可能性があることはご承知おきください。
リスト 1.5のGemfile
を、実際に使用する正確なバージョンのgemに置き換えたものをリスト 1.6に示します13。
なお、この置換えのついでに、sqlite3
gemをdevelopment環境とtest環境(7.1.1)だけで使う(つまりproduction環境では使わない)ように変更している点にもご注目ください。これは、後でHerokuで使うデータベースと競合する可能性を防ぐための処置です(1.5)。
最後に、Rubyの正確なバージョン番号を指定する行(ruby '2.6.3'
)をリスト 1.5から削除している点に注意してください。業務でWebサービスを開発する場面では削除しないことをオススメしますが、本チュートリアルでは、この行が残っているとエラーになる可能性が高まります。
Gemfile
の内容を一新させ、Rubyのバージョン番号を削除する Gemfile
source 'https://rubygems.org'
git_source(:github) { |repo| "https://github.com/#{repo}.git" }
gem 'rails', '6.0.3'
gem 'puma', '4.3.6'
gem 'sass-rails', '5.1.0'
gem 'webpacker', '4.0.7'
gem 'turbolinks', '5.2.0'
gem 'jbuilder', '2.9.1'
gem 'bootsnap', '1.4.5', require: false
group :development, :test do
gem 'sqlite3', '1.4.1'
gem 'byebug', '11.0.1', platforms: [:mri, :mingw, :x64_mingw]
end
group :development do
gem 'web-console', '4.0.1'
gem 'listen', '3.1.5'
gem 'spring', '2.1.0'
gem 'spring-watcher-listen', '2.0.1'
end
group :test do
gem 'capybara', '3.28.0'
gem 'selenium-webdriver', '3.142.4'
gem 'webdrivers', '4.1.2'
end
# Windows ではタイムゾーン情報用の tzinfo-data gem を含める必要があります
gem 'tzinfo-data', platforms: [:mingw, :mswin, :x64_mingw, :jruby]
アプリケーションのGemfile
の内容をリスト 1.6で置き換えたら、bundle install
を実行してgemをインストールします14。
$ cd hello_app/
$ bundle install
Fetching source index for https://rubygems.org/
.
.
.
bundle install
コマンドの実行にはしばらく時間がかかるかもしれません。完了後、アプリケーションが実行可能になります。
ちなみに、bundle install
を実行すると「まずbundle update
を実行してください」というようなメッセージが表示される場合があります。その場合は、メッセージのとおりにbundle update
をまず実行しましょう(マニュアルどおりに行かない場合に慌てず落ち着いて対応することもスキルの1つです。こうしたエラーメッセージにはその場で問題を解決する方法が含まれているものなので、よく読んでおきましょう)。
1.3.2 rails server
1.3のrails new
コマンドと1.3.1のbundle install
コマンドを実行したことにより、実際に動かすことのできるアプリケーションが作成されました。ありがたいことに、Railsには開発マシンでのみブラウズできるローカルWebサーバーを起動するためのコマンドラインプログラム(スクリプト)が付属しているので、rails server
というコマンドを実行するだけでRailsアプリケーションを簡単に起動することができます。
システムによっては(クラウドIDEであっても)、rails server
コマンドを実行する前にローカルWebサーバーへの接続を許可する必要が生じることがあります。これを行うには、config/environments/development.rb
ファイルを開いてリスト 1.7と図 1.15に示した2行を追加します。
config/environments/development.rb
Rails.application.configure do
.
.
.
# Cloud9 への接続を許可する
config.hosts.clear
end

なお、リスト 1.8に表示されているこのrails server
コマンドは、ターミナルタブをもうひとつ開いてそこで実行することをオススメします。そうすることで、最初のタブで引き続きコマンドを実行できるので便利です(図 1.16と図 1.17)。リスト 1.8で「Ctrl-C」キー15を押すことでサーバーをシャットダウンできます。
$ cd ~/environment/hello_app/
$ rails server
=> Booting Puma
=> Ctrl-C to shutdown server


(クラウドでない)OSでrails server
の結果を表示するには、ブラウザのアドレスバーにhttp://localhost:3000を貼り付けてください。クラウドIDEの場合は、Previewを開いて[Preview Running Application]をクリックして(図 1.18)ブラウザのウィンドウかタブで表示します(図 1.19)。いずれの場合も、図 1.20のように表示されるはずです。



rails server
を実行したときのデフォルトのRailsページ
演習
Railsチュートリアルには多くの演習問題が含まれています。チュートリアルを学びながらこれらの演習を解くことを強くオススメします。
演習と本文を分けて扱うため、演習の後にあるコードリストをこっそり見ても一般には参考になりません(演習の解答をその後で使うことがまれにあるかもしれませんが、その場合は明示的に本文で解答を示しています)。つまり、演習の解答を自分のコードに反映していくうちに、コードがチュートリアルから少しずつずれる可能性もあるということです。このようなずれを自力で解決することは、「熟練」にとても役立つ学びとなります(コラム 1.2)。
用意されている問題の多くはそう簡単に解けませんが、まだ最初なのでウォーミングアップとしてやさしい演習から始めることにしましょう。
- デフォルトのRailsページに表示されているものと比べて、今の自分のコンピュータにあるRubyのバージョンはいくつになっていますか? コマンドラインで
ruby -v
を実行することで簡単に確認できます。 - 同様にして、Railsのバージョンも調べてみましょう。調べたバージョンはリスト 1.2でインストールしたバージョンと一致しているでしょうか?
1.3.3 Model-View-Controller(MVC)
まだ始まったばかりですが、今のうちにRailsアプリケーションの全体的な仕組みを知っておくことは後々役立ちます(図 1.21)。デフォルトのRailsアプリ構造(図 1.13)を眺めてみると、app/
というディレクトリがあり、その中に「models
」「views
」「controllers
」という3つのサブディレクトリがあることに気付いた方もいると思います。ここにはRailsがMVC(model-view-controller)というアーキテクチャパターンを採用していることが暗に示されています。MVCでは、アプリケーション内のデータ(ユーザー情報など)と、データを表示するコードを分離します。アプリケーションのグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)は多くの場合このようにして構成されます。
ブラウザがRailsアプリと通信する際、一般的にWebサーバーにリクエスト(request)を送信し、これはリクエストを処理する役割を担っているRailsのコントローラ(controller)に渡されます。コントローラは、場合によってはすぐにビュー(view)を生成してHTMLをブラウザに送り返します。動的なサイトでは、一般にコントローラは(ユーザーなどの)サイトの要素を表しており、データベースとの通信を担当しているRubyのオブジェクトであるモデル(model) と対話します。モデルを呼び出した後、コントローラは、ビューを描画し、完成したWebページをHTMLとしてブラウザに返します。

今はこの解説がまだ少し抽象的に思えるかもしれませんが、この章は後に何度も参照しますのでご安心ください。特に1.3.4では、MVCを扱うお試しアプリケーションをご覧に入れます。2.2.2では、このtoyアプリを使ってMVCの詳細を解説します。サンプルアプリケーションでは、MVCの3つの要素をすべて扱いします。3.2でまずコントローラとビューを扱い、モデルは6.1から扱い始めます。7.1.2では、3つの要素が協調して動作します。
1.3.4 Hello, world!
記念すべき最初のMVCフレームワークアプリケーションとして、先ほど作ったアプリにほんのちょっぴり変更を加えることにしましょう。「hello, world!」という文字列を表示するだけのコントローラのアクションを追加し、図 1.20のデフォルトRailsページを置き換えてみましょう(コントローラのアクションについては2.2.2で詳しく解説します)。
コントローラという名前からご想像のとおり、コントローラのアクションはコントローラ内で定義します。ここでは、Applicationという名前のコントローラの中にhello
という名前のアクションを作成することにします。実際、この時点ではコントローラはApplicationひとつしかありません。次のコマンドを実行すると、現在あるコントローラを確認できます。
$ ls app/controllers/*_controller.rb
新しいコントローラの作成は第2章で行います。リスト 1.9に、hello
を定義したところを示します。ここではrender
メソッドで「hello, world!」というテキストを表示しています。この時点ではRubyの文法については気にする必要はありません。第4章で詳しく解説します。
hello
を追加する app/controllers/application_controller.rb
class ApplicationController < ActionController::Base
def hello
render html: "hello, world!"
end
end
表示したい文字列を返すアクションを定義したので、今度はデフォルトのページ(図 1.20)の代わりにこのアクションを使うようRailsに指示します。そのためには、Railsのルーター(router)を編集します。ルーターはコントローラとブラウザの間に配置され(図 1.21)、ブラウザからのリクエストをコントローラに振り分ける(=ルーティング)役割を果たします(図 1.21は簡単のためルーターを省略していますが、2.2.2で詳しく解説します)。ここではデフォルトのページを差し替えたいので、ルートのルーティング(ルート URLにアクセスした場合のルーティング)を変更することにします。例えば http://www.example.com/ というURLの末尾は「/」になっているので、ルートURLは単に「/」(スラッシュ)と簡略表記することもあります(訳注: 本チュートリアルではrouteやroutingを「ルーティング」、rootを「ルート」と表記します)。
Railsのルーティングファイル(config/routes.rb
)にはRailsガイドの「ルーティング」を参照するようコメントがあり、ルートルーティングの構成方法がリンク先に示されています(リスト 1.10)。具体的なルーティングの文法は、次のような形式になります。
root 'controller_name#action_name'
上のコードの場合、コントローラ名はapplication
であり、アクション名は hello
です。変更後のコードをリスト 1.11に示します。
config/routes.rb
Rails.application.routes.draw do
# For details on the DSL available within this file,
# see https://guides.rubyonrails.org/routing.html
end
config/routes.rb
Rails.application.routes.draw do
root 'application#hello'
end
リスト 1.9のコードとリスト 1.11のコードを使うと、ルートルーティングから「hello, world!」が返されるようになります(図 1.22)16。

演習
- リスト 1.9の
hello
アクションを書き換え、「hello, world!」の代わりに「hola, mundo!」と表示されるようにしてみましょう。 - Railsでは「非ASCII文字」もサポートされています。「¡Hola, mundo!」にはスペイン語特有の逆さ感嘆符「¡」が含まれています(図 1.23)17。「¡」文字をMacで表示するには、Optionキーを押しながら1キーを押します。この文字をコピーして自分のエディタに貼り付ける方が早いかもしれません。
- リスト 1.9の
hello
アクションを参考にして、2つ目のアクションgoodbye
を追加しましょう。このアクションは、「goodbye, world!」というテキストを表示します。リスト 1.11のルーティングを編集して、ルートルーティングの割り当て先をhello
アクションからgoodbye
アクションに変更します(図 1.24)。


1.4 Gitによるバージョン管理
実際に動作するRailsアプリを初めて完成させることができましたので、さっそくアプリケーションのソースコードをバージョン管理下に置いてみましょう。これを行わないとアプリケーションが動かないということではありませんが、ほとんどのRails開発者はバージョン管理を開発現場において必要不可欠なものであると考えています。また、バージョン管理システムを導入しておけば、プロジェクトのコードの履歴を追ったり、うっかり削除してしまったファイルを復旧(ロールバック)したりという作業が行えるようになります。バージョン管理システムを熟知することは、今ではあらゆるソフトウェア開発者にとって必須のスキルであると言ってよいでしょう。
バージョン管理システムにもさまざまなものがありますが、Rails開発者コミュニティではLinus TorvaldsがLinuxカーネルのために開発した分散バージョン管理システムであるGitが主流になっています。Git はそれだけで大きなテーマなので、すべてを説明しようとすると軽く一冊の本を超えてしまいます。バージョン管理システムの基本について詳しくは『開発基礎編: Git』をご覧ください18。
ソースコードのバージョン管理は「何としても」導入してください。バージョン管理はRailsのどんな場面でも必要になりますし、バージョン管理システムを応用して、自分の作成したコードを他の開発者と簡単に共有したり(1.4.3)、最初の章で作成したアプリケーションを本番サーバーへデプロイしたりすることもできる(1.5)からです。
1.4.1 インストールとセットアップ
推奨環境であるクラウドIDE(1.2.1)にはデフォルトでGitが導入されていますので、追加で導入する必要はありません。何らかの理由で導入が必要な方は『開発基礎編: Git』の「Gitのインストールとセットアップ」などを参考に、Gitを導入してみてください。
初回のシステムセットアップ
インストールしたGitを使う前に、最初に1回だけ若干の設定を行う必要があります。これはsystemセットアップと呼ばれ、コンピュータ1台につき1回だけ行います。
最初かつ必須の手順は、自分の名前とメールアドレスを設定することです(リスト 1.12)。
$ git config --global user.name "自分の名前"
$ git config --global user.email your.email@example.com
Gitに設定する名前やメールアドレスは、今後リポジトリ上で一般に公開されますのでご注意ください。
クラウドIDEを使う場合は、次にGitで使うデフォルトのエディタを設定します(編集や、“amend”でプロジェクトを変更するのに使われます)。ここでは、比較的使いやすくクラウドIDEのデフォルトエディタでもあるnano
エディタを使うことにしましょう。この設定を書き込んでもログアウト時にデフォルトエディタはログアウトしてしまいますし、パスも正しくないので、リスト 1.13を実行してシンボリックリンク(symlinkとも呼ばれます)を作成してnano
の実行ファイルを正しく指すようにしましょう19(リスト 1.13のコマンドは初心者には少々難しいので、今読んで理解できなくても心配は不要です)。
$ sudo ln -sf `which nano` /usr/bin
次のエイリアス設定は必須ではありませんが、checkout
コマンドを短く入力できるので、設定しておくと便利です(リスト 1.14)。
git co
をcheckoutのエイリアスに設定する
$ git config --global alias.co checkout
本チュートリアルでは、誰が入力しても動くように、省略なしのgit checkout
で記述してありますが、実際の筆者はほぼ毎回git co
と入力しています。
最後の手順は、push
コマンドやpull
コマンドを入力するたびにパスワードを入力しなくてよいようにする設定です( 1.4.4)。このオプションはシステムによって設定方法が若干異なりますので、Linux環境以外をお使いの方は“Caching your GitHub password in Git”をご覧ください。Linux環境(もちろんクラウドIDEも!)をお使いの方は、cache timeoutを設定するだけで完了します(リスト 1.15)。
$ git config --global credential.helper "cache --timeout=86400"
リスト 1.15を設定すると、Gitはパスワードを86,400秒(つまり1日)の間保持してくれます20。セキュリティ意識の高い方は、デフォルトの900秒(つまり15分)のようにもっと短い時間にしてもよいでしょう。
初回のリポジトリセットアップ
今度は、リポジトリ(リポ(repo)と略されることもあります)ごとに作成の必要な作業を行います。まず、helloアプリケーションのルートディレクトリに移動し、新しいリポジトリの初期化を行います。
$ cd ~/environment/hello_app # Just in case you weren't already there
$ git init
Reinitialized existing Git repository in
/home/ubuntu/environment/hello_app/.git/
リポジトリが再初期化されたという意味のメッセージをGitが出力することにご注目ください。その理由は、Rails 6以降ではrails new
コマンド(リスト 1.4)を実行すると自動的にGitリポジトリも生成するためです(Gitがtech業界でどれほど定着しているかがよくわかりますね)。このため、技術的にはgit init
を必ずしも実行する必要はないと言えます。しかし他の一般的なGitリポジトリはそうではないので、常にgit init
を実行する癖をつけておくのはよいことです。
次はgit add -A
を実行して、プロジェクトの全ファイルをリポジトリに追加します21
$ git add -A
このコマンドを実行すると、現在のディレクトリにあるファイルがすべて追加されます。ただし、.gitignore
に記載されているパターンにファイル名がマッチする場合、そのファイルは追加されません。.gitignore
ファイルは、rails new
コマンドを実行すると自動的に生成され、Railsプロジェクト用のパターンも記入されます。もちろん、自分でパターンを追加しても構いません22。
Gitにプロジェクトのファイルを追加すると、最初はステージング(Staging)という一種の待機用リポジトリに置かれ、コミットを待ちます。安全のため、いきなりコミットしないようになっているのです。ステージングの状態を知るにはstatus
コマンドを使います。
$ git status
On branch master
No commits yet
Changes to be committed:
(use "git rm --cached <file>..." to unstage)
new file: .browserslistrc
new file: .gitignore
new file: .ruby-version
new file: Gemfile
new file: Gemfile.lock
.
.
.
ステージングエリアで控えている変更を本格的にリポジトリに反映(コミット)するには、commit
コマンドを使います。
$ git commit -m "Initialize repository"
[master (root-commit) df0a62f] Initialize repository
.
.
.
-m
フラグを使うと、コミットメッセージをコマンドラインで直接指定できます。-m
フラグを使わない場合はシステムのデフォルトのエディタが開き、そこでコミットメッセージを入力します(本チュートリアルでは常に-m
フラグを使っていきます)。
ここでコミットについて重要な点を解説しておきます。Gitにおけるコミット操作は、あくまでローカルマシン上にしか記録されないことに注意してください。git push
コマンドで変更をリモートリポジトリにプッシュする方法については1.4.4で解説します。
ちなみに、log
コマンドでコミットメッセージの履歴を参照できます。
$ git log
commit b981e5714e4d4a4f518aeca90270843c178b714e (HEAD -> master)
Author: Michael Hartl <michael@michaelhartl.com>
Date: Sun Aug 18 17:57:06 2019 +0000
Initialize repository
ログがある程度以上長い場合は、q
キーを押して終了します。『開発基礎編: Git』でも解説していますが、git log
ではless
コマンドをインターフェイスとして使っています。なお、lessについての詳細は、『開発基礎編: コマンドライン』の「使うならmoreよりless」で説明しています。
1.4.2 Gitのメリット
今の時点では、ソースコードをバージョン管理下に置かなければならない理由が今ひとつよくわからない、という方がいるかもしれませんので、例を1つご紹介します。仮に、あなたが重要なapp/controllers/
ディレクトリを削除してしまったとしましょう(ホーマー・シンプソンがやらかすような感じで)。
$ ls app/controllers/
application_controller.rb concerns/
$ rm -rf app/controllers/
$ ls app/controllers/
ls: app/controllers/: No such file or directory
ここでは、Unixコマンドのls
でapp/controllers/
ディレクトリの中身を表示した後、rm
コマンドをうっかり実行してしまい、このディレクトリを削除してしまったとします(表 1.1)。なお『開発基礎編: コマンドライン』の「ディレクトリのリネーム/コピー/削除を行う」でも説明したように、ここで使っている-rf
フラグは、「recursive」(サブディレクトリやその中のファイルもすべて削除する)と「force」(削除して良いかどうかをユーザーに確認しない)を指定するオプションです。
現在の状態を確認してみましょう。
$ git status
On branch master
Changes not staged for commit:
(use "git add/rm <file>..." to update what will be committed)
(use "git checkout -- <file>..." to discard changes in working directory)
deleted: app/controllers/application_controller.rb
deleted: app/controllers/concerns/.keep
no changes added to commit (use "git add" and/or "git commit -a")
ファイルがいくつか削除されましたが、この変更が行われたのは現在の「作業ツリー」内のみなので、まだコミット(保存)されていません。つまり、以前のコミットをcheckout
コマンド(と、現在までの変更を強制的に上書きして元に戻すための-f
フラグ)でチェックアウトすれば、簡単に削除前の状態に戻すことができます。
$ git checkout -f
$ git status
On branch master
nothing to commit, working tree clean
$ ls app/controllers/
application_controller.rb concerns/
削除されたディレクトリとファイルを無事復旧できました。これでひと安心です。
1.4.3 GitHub
Gitを使ってプロジェクトをバージョン管理下に置くことができたので、今度はGitHubにソースコードをアップロードしてみましょう。GitHubはGitリポジトリのホスティングと共有に特化したサイトです。リポジトリをGitHubにわざわざプッシュするのには2つの理由があります。1つ目は、ソースコード(とそのすべての変更履歴)の完全なバックアップを作成することです。2つ目は、他の開発者との共同作業をより簡単に行うことです。
GitHubを始める方法は単純明快です。GitHubアカウントをお持ちでない方はGitHubアカウントに登録(サインアップ)しましょう(図 1.25)23。

ユーザー登録またはサインインが完了したら、+記号のドロップダウンメニューをクリックして“New repository”を選択します(図 1.26)。

新しいリポジトリページのフィールドに、リポジトリ名(hello_app
)と適当なdescription(説明)を入力したら、万全の注意を払って確実に“Private”オプションを選択してください( 1.27)。公開されているpublicリポジトリで自分のRailsアプリをうっかり人目にさらしてしまっても原理的には安全ではありますが、それでも秘密鍵を漏らしてしまうなど、何があってもおかしくありません。ですから、何か起きる前にリポジトリをデフォルトでprivateにしておく用心深さが大事です24。

“Create repository”ボタンをクリックすると、図 1.28のように既存のリポジトリをGitHubに追加するコマンドが表示されるはずです。ここではHTTPSオプションを選択してください。25

最後にリスト 1.16のコマンドを実行すると、最初の1回はGitHubのパスワードを入力しなければいけませんが、以後はリスト 1.15の設定のおかげでパスワード入力は(設定したキャッシュタイムアウト期間が過ぎるまでは)不要になります。
$ git remote add origin https://github.com/<あなたのGitHubアカウント名>/hello_app.git
$ git push -u origin master
リスト 1.16の最初のコマンドは、GitHubをリポジトリのoriginとしてGitの設定ファイルに追加するためのものです。次のコマンドでは、ローカルのリポジトリをリモートのoriginにプッシュ(push)します(-u
フラグについては気にする必要はありません。気になる方は "git set upstream" で検索してみてください。また、ブランチ名についてはコラム 1.4で解説しています。)なお、リスト 1.16の<あなたのGitHubアカウント名>
の部分は実際のユーザー名に置き換える必要があります。たとえば著者が行うのであれば、実行するコマンドは次のようになります。
$ git remote add origin https://github.com/mhartl/hello_app.git
上のコマンドを実行すると、hello_appのリポジトリのページがGitHub上に作成されます。このページでは、ファイルの参照、全コミット履歴などさまざまな機能を利用できます(図 1.29)。

1.4.4 ブランチ、編集、コミット、マージ
1.4.3の手順に沿って進めた場合、README
ファイルの内容が自動的にGitHub画面に表示されることに気付いたでしょう(図 1.30)。このREADME.md
ファイルは、リスト 1.4のコマンドを実行すると自動生成されます。ファイル名の拡張子が「.md
」となっているファイルは、Markdownという人間にとってもう少し読みやすい記法を使って書きます26。Markdownは簡単にHTMLに変換でき、GitHubでも前述のように.mdファイルを自動的にHTMLで表示してくれます。
Railsが自動生成したREADMEをそのまま使ってもよいですし、プロジェクトに合わせて内容を書き換えてももちろん構いません。ここでは、READMEをRailsチュートリアル固有の内容に合わせて書き換えてみましょう。それと同時に、Gitでbranch、edit、commit、mergeを行う際にお勧めのワークフローの実例をご覧いただきます27。

Branch(ブランチ)
Gitは、ブランチ(branch)を極めて簡単かつ高速に作成することができます。ブランチは基本的にはリポジトリのコピーで、ブランチ上では元のファイルを触らずに新しいコードを書くなど、自由に変更や実験を試すことができます。通常、親リポジトリはmasterブランチと呼ばれ、トピックブランチ(短期間だけ使う一時的なブランチ)はcheckout
と-b
フラグを使って作成できます。
$ git checkout -b modify-README
Switched to a new branch 'modify-README'
$ git branch
master
* modify-README
2つ目のコマンド(git branch
)は、すべてのローカルブランチを一覧表示します。「*
」はそのブランチが現在使用中であることを表します。1番目のgit checkout -b modify-README
コマンドで、ブランチの新規作成とそのブランチへの切り替えが同時に行われていることにご注目ください。modify-README
ブランチに「*」が付いていることで、このブランチが現在使用中であることが示されています
ブランチの真価は他の開発者と共同で作業する時に発揮されますが28、本チュートリアルのように一人で作業する時にも非常に有用です。masterブランチはトピックブランチで行った変更に影響されないので、たとえブランチ上のコードがめちゃくちゃになってしまっても、masterブランチをチェックアウトしてトピックブランチを削除すれば、いつでも変更を破棄する事ができます。具体的な方法についてはこの章の最後で説明します。
ちなみに、通常このような小さな変更のためにわざわざブランチを作成する必要はありませんが、「よい習慣を身につけるのは早ければ早いほど望ましい」ので、今のうちに少しでも練習しておきましょう。
2020年10月、GitHubから次のアナウンスがありました。今後新規作成されるリポジトリについては、デフォルトのブランチ名を従来のmaster
から(一部の開発者が望んでいる)main
に変更したというものです。皆さんも今後新しいmain
というブランチ名を使うことについてやぶさかではないと思いますが、従来のmaster
ブランチは(Railsチュートリアルも含めて)これまで広く使われているので、デフォルトブランチ名を引き続きmaster
にすれば既存のGitのヘルプドキュメントの多くと辻褄が合うようになります。デフォルトブランチ名を元に戻したい場合は、github.com/settings/repositoriesをブラウザで開いて「Repository default branch」をmain
からmaster
に変更します。詳しくはブログ記事「Default Git Branch Name with Learn Enough and the Rails Tutorial(英語)」をご参照ください。
訳注: デフォルトブランチ名変更の理由についてはWikipediaに譲りますが、デフォルトブランチ名にmain
が使われることが増えると予想されます。しかしmaster
も現在広く使われていて、後から変更するにはコスト(工数)もかかるため、皆さんが今後ドキュメントや書籍などでmaster
というブランチ名を見かけた場合は、適宜main
に読み替えて理解すると良いでしょう。
Edit(編集)
トピックブランチを作ったら、READMEを編集してカスタムコンテンツを追加しましょう(リスト 1.17と図 1.31)。
README
ファイル README.md
# Ruby on Rails Tutorial
## "hello, world!"
This is the first application for the
[*Ruby on Rails Tutorial*](https://railstutorial.jp/)
by [Michael Hartl](https://www.michaelhartl.com/). Hello, world!

Commit(コミット)
変更が終わったら、ブランチの状態を確認してみましょう。
$ git status
On branch modify-README
Changes not staged for commit:
(use "git add <file>..." to update what will be committed)
(use "git checkout -- <file>..." to discard changes in working directory)
modified: README.md
no changes added to commit (use "git add" and/or "git commit -a")
この時点で、1.4.1.2のようにgit add -A
を実行することもできますが、git commit
には現存するすべてのファイル(git mvで作成したファイルも含む)への変更を一括でコミットする-a
フラグがあります。このフラグは非常によく使われます。
$ git commit -a -m "Improve the README file"
[modify-README 34bb6a5] Improve the README file
1 file changed, 5 insertions(+), 22 deletions(-)
-a
フラグは慎重に扱ってください。最後のコミット後に新しいファイルを追加した場合は、まずgit add
を実行してバージョン管理下に置く必要があります。
コミットメッセージは現在形かつ命令形で書くようにしましょう29。Gitのモデルは、(単一のパッチではなく)一連のパッチとしてコミットされます。そのため、コミットメッセージを書くときには、そのコミットが「何をしたのか」と過去形の履歴スタイルで書くよりも「何をする」ためのものなのかを現在形かつ命令形で書く方が、後から見返したときにわかりやすくなります。さらに、現在形かつ命令形で書いておけば、Gitコマンド自身によって生成されるコミットメッセージとも時制が整合します。詳しくは『開発基礎編: Git』の 「Gitにコミットするとは」をご覧ください。
Merge(マージ)
ファイルの変更が終わったので、masterブランチにこの変更をマージ(merge)します。
$ git checkout master
Switched to branch 'master'
$ git merge modify-README
Updating b981e57..015008c
Fast-forward
README.md | 27 +++++----------------------
1 file changed, 5 insertions(+), 22 deletions(-)
Gitの出力には34f06b7
のようなランダムな文字列(ハッシュ)が含まれていることにご注目ください。Gitはこれらをリポジトリの内部処理に使っています。この文字列は環境の違いにより上記のものと多少異なるかもしれませんが、他の部分はほぼ同じはずです。
変更をマージした後は、git branch -d
を実行してトピックブランチを削除すれば終わりです。
$ git branch -d modify-README
Deleted branch modify-README (was 015008c).
トピックブランチの削除は必須ではありません。実際、トピックブランチを削除せずにそのままにしておくことはよく行われています。トピックブランチを削除せずに残しておけば、トピックブランチとmasterブランチを交互に行き来して、キリの良い所で変更をマージする事ができます。
上で述べたように、git branch -D
でトピックブランチ上の変更を破棄することもできます。
# これはあくまで例です。ブランチでミスをした時以外は実行しないでください。
$ git checkout -b topic-branch
$ <ココで何か変更を加えてみてください>
$ git add -A
$ git commit -a -m "Make major mistake"
$ git checkout master
$ git branch -D topic-branch
-d
フラグと異なり、-D
フラグは変更をマージしていなくてもブランチを削除してくれます。
Push(プッシュ)
README
ファイルの更新が終わったので、GitHubに変更をプッシュして結果を見てみましょう。既に1.4.3で一度プッシュを行ったので、大抵のシステムではgit push
を実行するときにorigin master
を省略できます。
$ git push
デフォルトのREADMEと同様、更新されたREADMEもGitHubでよしなにHTMLに変換してくれます(図 1.32)。

README
ファイル
1.5 デプロイする
まだ第1章の途中ですが、このRailsアプリは既に本番環境にデプロイしようと思えばできる状態になっています。1.4でバージョン管理システムを設定済みなので、技術的にはこの時点でのアプリケーションのデプロイは必須ではありませんが、頻繁に本番環境にデプロイすることによって、開発サイクルでの問題を早い段階で見つけることができます。開発環境のテストを繰り返すばかりで、いつまでも本番環境にデプロイしないままだと、アプリケーションを公開するギリギリの時になって思わぬ事態に遭遇する可能性が高まります30。
かつてはRailsアプリの本番デプロイは大変な作業でしたが、ここ数年急速に簡単になってきており、さまざまな本番環境を選択できるようになりました。Phusion Passenger(ApacheやNginx31 などのWebサーバー用のモジュール)を実行できるさまざまな共有ホストや仮想プライベートサーバー(VPS)の他に、一通りのデプロイ環境を提供するEngine YardやRails Machine、クラウドサービスを提供するHerokuなどがあります。
私のお気に入りはHerokuで、Railsを含むRuby Webアプリ用のホスティングプラットフォームです(既にご存知の方もいるかもしれませんが、Heroku自身もRailsで構築されています)。Herokuは、ソースコードのバージョン管理にGitを使っていれば、Railsアプリケーションを簡単に本番環境にデプロイできます。本書でGitを導入したのは、まさにこのHerokuで使うためでもあります(まだGitをインストールしていない方は1.4を参照してください)。さらに、Herokuのfree tier プランには、本チュートリアルでの利用を含む、さまざまな用途のための機能が十分過ぎるほど備わっています。
この章では、最初のアプリケーションをHerokuにデプロイします。作業内容の一部に少しばかり高度な部分も含まれていますが、今はすべてを理解しておく必要はありませんのでご安心ください。今大事なのは、この章の終わりまで手順を進めることで、作成したアプリケーションを実際のWebサービスとしてデプロイすることです。
1.5.1 Herokuのセットアップとデプロイ
HerokuではPostgreSQLデータベースを使います(ちなみに発音は “post-gres-cue-ell” で、よく“Postgres”と略されます)。そのためには、本番(production)環境にpg
gemをインストールしてRailsがPostgreSQLと通信できるようにします。
group :production do
gem 'pg', '1.1.4'
end
HerokuではSQLiteがサポートされていないため、リスト 1.6の変更を行って、sqlite3
gemが本番環境に導入されないようにしておきます32。
group :development, :test do
gem 'sqlite3', '1.4.1'
gem 'byebug', '11.0.1', platforms: [:mri, :mingw, :x64_mingw]
end
最終的にGemfile
はリスト 1.18のようになります。
Gemfile
Gemfile
source 'https://rubygems.org'
git_source(:github) { |repo| "https://github.com/#{repo}.git" }
gem 'rails', '6.0.3'
gem 'puma', '4.3.6'
gem 'sass-rails', '5.1.0'
gem 'webpacker', '4.0.7'
gem 'turbolinks', '5.2.0'
gem 'jbuilder', '2.9.1'
gem 'bootsnap', '1.4.5', require: false
group :development, :test do
gem 'sqlite3', '1.4.1'
gem 'byebug', '11.0.1', platforms: [:mri, :mingw, :x64_mingw]
end
group :development do
gem 'web-console', '4.0.1'
gem 'listen', '3.1.5'
gem 'spring', '2.1.0'
gem 'spring-watcher-listen', '2.0.1'
end
group :test do
gem 'capybara', '3.28.0'
gem 'selenium-webdriver', '3.142.4'
gem 'webdrivers', '4.1.2'
end
group :production do
gem 'pg', '1.1.4'
end
# Windows ではタイムゾーン情報用の tzinfo-data gem を含める必要があります
gem 'tzinfo-data', platforms: [:mingw, :mswin, :x64_mingw, :jruby]
本番用のgem(この場合はpg
gem)をローカルの環境にはインストールしないようにするために、bundle install
に特殊なフラグ「--without production
」を追加します(リスト 1.19)。
$ bundle install --without production
リスト 1.18で追加したgemは本番環境でしか使わないので、このフラグを追加したコマンドを実行してもローカル環境には本番用gemは反映されません。ではなぜ今リスト 1.19のコマンドを実行したかというと、pg
gemを追加したことをGemfile.lock
に反映させないと、本番環境へのデプロイで失敗してしまうためです。これから行う本番環境へのデプロイを成功させるために、変更した内容のコミットも忘れずにおこないましょう。
$ git commit -a -m "Update Gemfile for Heroku"
次にHerokuのアカウントを新規作成して設定します。まずはHerokuのユーザー登録を行います。続いて、自分のシステムにHerokuコマンドラインクライアントがインストールされているかどうかを確認します。
$ heroku --version
Herokuがインストールされていると、バージョン番号とともにheroku
のコマンドラインインターフェース(Command Line Interface: CLI)が利用可能であるというメッセージが表示されます。ただしほとんどの場合は最初からインストールされていないので、The Heroku CLIからインストールする必要があります33。クラウドIDEを使っている場合は、リスト 1.20のコマンドを実行することでHeroku CLIをインストールできます。
$ source <(curl -sL https://cdn.learnenough.com/heroku_install)
リスト 1.20のコマンドでインストールできたかどうかは、次のコマンドで確認することができます。正しくインストールできていれば、バージョン番号が表示されるようになります(バージョン番号は異なっていても大丈夫です)。
$ heroku --version
heroku/7.27.1 linux-x64 node-v11.14.0
Herokuのコマンドラインインターフェイス(CLI)がインストールされていることが確認できたら、いよいよheroku
コマンドで、Herokuユーザー登録時に使ったメールアドレスとパスワードを入力してログインします(なお--interactive
オプションを使うと、heroku
コマンドでブラウザを開かないようにできます)。
$ heroku login --interactive
最後にheroku create
コマンドを実行して、Herokuサーバー上に今回開発したアプリケーションの実行場所を作成します(リスト 1.21)。
$ heroku create
Creating app... done, blooming-bayou-75897
https://blooming-bayou-75897.herokuapp.com/ |
https://git.heroku.com/blooming-bayou-75897.git
このheroku
コマンドを実行すると、Railsアプリケーション専用のサブドメインが作成され、ただちにブラウザで表示可能になります。今はまだ何もありませんが、すぐにデプロイしてWebページを表示させましょう。
1.5.2 Herokuにデプロイする(1)
Railsアプリケーションを実際にHerokuにデプロイするには、まずGitを使ってHerokuにリポジトリをプッシュします。警告メッセージが表示されることもありますが、今は無視してください。詳しくは7.5で解説します。
$ git push heroku master
1.5.3 Herokuにデプロイする(2)
失礼、その2はありません。以上でおしまいです。
デプロイされたアプリケーションの表示は、heroku create
(リスト 1.21)を実行した際に生成されたアドレスをブラウザで開くだけです34。実行結果を図 1.33に示します。ページの内容は図 1.22とまったく同じですが、今やそれがインターネット上の本番Webページとして確かに公開されているのです35。

1.5.4 Herokuコマンド
Herokuのコマンドはたくさんあるので、ここでは簡単に触れる程度にとどめますが、少しだけ使ってみましょう。アプリケーションの名前を変更してみます。
$ heroku rename rails-tutorial-hello
rails-tutorial-hello
は本書で既に使っているため、上記のコマンドを実行するとエラーになります。 実際は、Herokuで生成されたデフォルトのアドレスでも十分です。本当にアプリケーションの名前を変えてみたい場合は、次のようなランダムなサブドメイン名を設定し、この章の冒頭で説明したアプリケーションのセキュリティを実装してみる方法もあります。
hwpcbmze.herokuapp.com seyjhflo.herokuapp.com jhyicevg.herokuapp.com
このようなでたらめのサブドメイン名なら、URLを教えない限りサイトにアクセスされる心配もありません36。ちなみに、Rubyの威力の一端をお見せするために、サブドメイン用のランダムな文字列を生成するコンパクトなコードをササっと書いてみます。
('a'..'z').to_a.shuffle[0..7].join
Herokuではサブドメインの他に独自ドメインも使えます。実を言うと、このRailsチュートリアルもHeroku上に置かれているのです。したがって、本チュートリアルをオンラインで読んでいるのであれば、まさに今HerokuにホスティングされたWebサイトを見ているということになります。カスタムドメインや他のHeroku関連の詳細な情報については、Herokuのドキュメント(英語)を参照してください。
演習
heroku help
コマンドを実行し、Herokuコマンドの一覧を表示してみてください。Herokuアプリのログを表示するコマンドはどれですか?- 上の演習で見つけたコマンドを使って、Herokuアプリの最近のログ(log)を調べてみましょう。直近に発生したイベントは何でしたか?(このログを調べるコマンドを覚えておくと、本番環境の不具合を見つけるときに役立ちます)
1.6 最後に
この章では開発環境のセットアップやインストール、バージョン管理、本番環境へのデプロイなど、多くの課題を乗り越えました。次の章では第1章で学んだことを基礎として、データベースも備えたtoyアプリを作りながらRailsでできることの概観を学びます。
また、各章の最後にはTwitterで進捗を投稿できるボタンがあります。ハッシュタグ『#Railsチュートリアル』を使って他の学習者と繋がることもできるので、ぜひお気軽にご活用ください。
Railsチュートリアルには公式Twitterアカウント『@RailsTutorialJP』38もあります。Railsチュートリアルの最新情報を周知したり学習者のコメントをハイライトしているので、よければこちらもフォローしてみてください。
1.6.1 本章のまとめ
- Ruby on Railsとは、Web開発のためのフレームワークであり、Rubyプログラミング言語によって記述されている。
- 事前設定済みのクラウド環境を利用することで、Railsのインストール、アプリケーションの生成、生成されたファイルの編集を簡単に行うことができる。
- Railsには
rails
という名前のコマンドラインコマンドがあり、rails new
で新しいアプリケーションを生成したり、rails server
でローカルサーバーを実行したりできる。 - コントローラのアクションを追加したり、ルートルーティングを変更したりするだけで「hello, world」アプリケーションを作成できる。
- データの喪失を防止し、他の開発者との共同作業を行えるようにするため、Gitによるバージョン管理を導入してGitHubの非公開リポジトリにプッシュする。
- 作成したアプリケーションをHerokuの本番環境にデプロイした。
1.7 本チュートリアルで用いている慣習
本チュートリアルで用いているコマンド操作などの慣習のほとんどは、見ればすぐわかるものです。このセクションでは、見ただけではわからない可能性のある慣習について補足します。
本チュートリアルでは、Railsチュートリアル初心者シリーズの『開発基礎編: コマンドライン』で解説されているコマンドを多用しています。簡単のため、コマンドラインの例に使っているプロンプトには、以下のようにUnixスタイルのドル記号を用いています。
$ echo "hello, world"
hello, world
Railsにも、コマンドラインで実行できるコマンドが多数備わっています。たとえば、 1.3.2では次のようにrails server
コマンドを実行してローカル開発用のWebサーバーを起動しています。
$ rails server
Railsチュートリアルでは、コマンドラインのプロンプトと同様、ディレクトリの区切り文字もUnixの慣習に従って表記しています(スラッシュ文字/
)。たとえば、サンプルアプリケーションのproduction.rb
設定ファイルが置かれているディレクトリは以下のように表します。
config/environments/production.rb
上のファイルパスは、そのRailsアプリケーションのルートディレクトリを起点とする相対パスとして理解すべきです。そしてこのルートディレクトリの位置はシステムによって異なります。たとえば、クラウドIDE(1.2.1)の場合は以下のようなディレクトリに配置されます。
/home/ubuntu/environment/sample_app/
つまり、この場合のproduction.rb
の完全なファイルパス(フルパス)は以下のようになります。
/home/ubuntu/environment/sample_app/config/environments/production.rb
本チュートリアルでは、こうしたアプリケーションパスを常に書くことはせず、基本的にconfig/environments/production.rb
のように省略した形で表記します。
Railsチュートリアルではさまざまなプログラムからの出力を多数掲載しています。これらの出力結果は、システムによって微妙に異なりますが、そうした些細な違いはいくらでも見つけられるので、掲載されている出力結果と自分の環境での出力結果が一字一句違わず一致するとは限りません。しかしこうした微細な違いは、はっきり言えば問題にはなりません。もうひとつ言うと、システム環境が違うとエラー出力が変わるコマンドもあります。そうしたエラーを本チュートリアルでひとつ残らず網羅しようとすれば、筆者がシジフォスと同じ苦しみを味わうことになりますので、エラーについてはそのアプローチではなく「エラーメッセージはググってください」とGoogleに丸投げする手法を採用しています。これは現実のソフトウェア開発においても非常に有用な手段なのです(コラム 1.2)。本チュートリアルを進めていて詰まってしまったらRailsチュートリアルのヘルプページに掲載されている情報源にあたってみることをオススメします39。
RailsチュートリアルではRailsアプリケーションをテストする方法についても解説していますので、ほんの小さな特定のコード片の違いが原因でテストスイートが失敗することもあれば(テストスイートが失敗すると赤い文字で表示されます)、パスすることもある(テストスイートがパスすると緑色の文字で表示されます)ことを知っておくと何かと役に立ちます。わかりやすくするため、失敗するテストには red 、パスするテストには green と書いてあります。
最後になりますが、Railsチュートリアルではサンプルコードをよりわかりやすくするため、2つの慣習を採用しています。1つ目は、注目して欲しい行を以下のように色を変えてハイライトしています。
class User < ApplicationRecord
validates :name, presence: true
validates :email, presence: true
end
このようにコード行をハイライトすることで、そのコードサンプルで追加された新しい行を示すこともあれば(例外もありますが)、その前のコードサンプルとどこが違うかを示すこともあります。2番目は、同じコードを何度も書かずに省略するために、以下のようにドットを縦に並べて省略を表します。
class User < ApplicationRecord
.
.
.
has_secure_password
end
この縦のドットはコードが省略されていることを表しているので、そのままコピペしないでください。
foo
という名前のメソッド定義を見つけるには、「def foo」をグローバル検索します。echo
コマンドと>>
(append)コマンドを使います。>>
は賢いので、append先のファイルが存在しなくても作ってくれます。~> 6.0
と指定するとバージョン6.9
のgemがインストールされる可能性はありますが、6.0
がインストールされることはありません。この指定法は、gemのプロジェクトがセマンティックバージョニング(略称: semver)と呼ばれる方式でバージョン番号を管理している場合、特に便利です。セマンティックバージョニングとは、ソフトウェア同士の依存関係を壊さないよう変更を最小限にしてリリース番号を与える方法です。vim
を使いたい方は、リスト 1.13の`which nano`
の部分を`which vim`
に書き換えて使ってください。git add .
コマンドを使います(このドットはカレントディレクトリを表します)。両者に違いが生じることはめったにありませんが、普通はgit add -A
を使いますし、Gitの公式ドキュメントにもそう書いてあるので、本書ではこの書き方を採用しています。heroku open
コマンドで自動的にブラウザ表示することもできます。sample
メソッドを使うことで ('a'..'z').to_a.sample(8).join
と書くこともできます。指摘してくれた読者のStefan Pochmannに感謝! 著者もまた新たなRubyの一面に触れられました。
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